2018.2.12 第17話

点打ち

「そこかな〜!」「もう少し下だな!」「小さすぎる!」「駄目だな!」デザインを学び始めた頃、授業の中で〝点打ち〟という、作業?トレーニング?学習?があった。矢萩喜從郎という桑沢デザイン研究所出身の先生の授業なのだが、生徒に30cm位の四角形を黒板全面に書かせ、その四角の中に〝キジュウロウ〟(生徒たちはそう呼んでいた)が無造作に落書きする。クネクネ、グチャグチャ、渦巻き、、、。「よし!田中!打て!」と言って白いチョークを渡される。その四角の中に〝点〟を一つ打って〝要素〟を完成させるというのだ。〝四角の中に無駄をなくし緊張感を持たせる。〟ポスターで言えば、クネクネ、グチャグチャがビジュアル。点がロゴorキャッチコピーというわけだ。
 
レイアウトはバランスと重さ。紙面において白いものは軽く、黒いものは重く感じる。なので〝点打ち〟は白チョークからカラーチョークへと進化してゆく。理屈ではなく、素人が見ても、天地左右どちらにも傾いて感じなければ、そのレイアウトは完成されている。人の体で言うと〝体幹ができている〟ということかもしれない。
 
この〝点打ち〟によるバランス感覚は、グラフィックデザインだけのものではない。写真のフレーミング(トリミング)、アパレルコーディネイト、壁にかけるフレームの位置、家具のレイアウト、ランドスケープ、、、。自分にとって、視覚的なものの〝間合い〟の計らいはこのことに起因しているのは間違いない。
 
あらゆるものがこのバランスによって保たれている。と〝良い〟のだが、、、。〝良い〟のだが、、、というのは、自分だけの問題なのだが、そうでもないことも多々あるのだ。絶対音感を持っている人が、ズレた音に耐えられないように、バランスの取れてない物や場所に遭遇すると、胃が重〜い感じになってしまう。まっすぐ立っていない電柱を見ると首が曲がる。直したくなる。ほとんど病気に近いのだ。(笑)
 
◀︎第16話へ  第18話へ▶︎