2018.2.5 第16話

衣食住遊休知美健安保

西武流通グループ(後のセゾングループ)が一番元気だった頃、堤(つつみ)総帥が提唱した言葉だ。人が生きてゆくための三大要素、衣食住に加えて、遊・休・知・美・健・安・保。字のごとくなのだが、この全ての価値観において、高い次元でお客様に提供できる「グループ」でありたいと。モノだけではなくコトの提供。他のライバル流通グループからも憧憬された言葉だった。
 
papaも旭川西武広告制作室にてこの10文字を頭に刻んで仕事をしていた。広告媒体にこのことが網羅されているのか?例えば新聞10段広告の限られたスペースの中で、露出度の大小は別にして、このことが意識下にあって構成されているか?決裁の要でもあった。
 
そんなことが可能だろうか?自分と家族に当てはめてみる。「papa家ならではとは、何なのか?」「衣」= 既にアウトドアブランドが好きだった。patagoniaが目白(下落合)に日本初のお店を出した頃だ。東京出張の度に、家族のフリース(シンチラ)が増えていった。「食」= mamaの作ったものを朝昼晩と三食頂いていた。今ほど料理の幅もなかったが、母の味に寄せて欲しいと思ったことはない。mamaの味噌汁は美味い。「住」= 平屋の一軒家。古く狭かったが落ち着いていた。「こんなものかな」と。「遊・休」= この分野は偏ってる(笑)。豪語していた「papaは子供達に〝教育〟は出来ない〝共育〟ならできる。と。子を持つのも初めてなら親になったのも初めてなのだから、共に育とう!」「それは〝自然〟が教えてくれるのだ!」と。毎週末、野に山に川に湖に海に、家族で出かけていた。「知」= VISIONのメンバー、販促マンたちの知的水準は高かった。「美」= 削ぎ落とされたバランス?「健」= 食、運動、睡眠、安らぎ。「安・保」= セゾン生命保険(笑)。
 
papa家はかなり偏っているのだが、
 
「衣・食・住・遊・休・知・美・健・安・保・の高い次元においての提供。」それは百貨店が百貨店として成り立っていた時代だった。生活者も充足していた。送り手と受け手の想いが一致していた。
 
しかし、ニーズや価値観が多様化、専門化、特化してゆく中で、人々は「個性」や「その人なりの質」「ならではの」といったものを欲するようになる。本当の意味での「本物」を求めているのだと。
 
そのことに耳を傾け、「想いを形に」してゆく。
 
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